第2話 手掛り

 村を出て、シェケルは歩きながら早速途方に暮れた。どこに行けばいいのか?誰を探せばいいのか?ヒントはニダから受け取った鍵と伝説として語られている話だけ。

 伝説ではアマラは「リエル」と名乗った当代随一の魔術師に助けられ、鍵を渡されたことになっている。しかし、これは300年以上前の話である。シェケル自身はは確かに魔力の持ち主だが、他に魔術の心得のある知り合いなどはいない。結局、何の解決にもならず、とりあえず森の中を進んでゆく。


 しばらく行ったところに小さな家があった。

「こんにちは。」

 声をかけてきたのは畑仕事中のお婆さんだった。

「一人かね?」

「そうです。」

「そうかね。うちに少し寄って行かんかね?こんなところには客人は滅多に来ないんだよ。」

 

シェケルはお婆さんの家にお邪魔することにした。お婆さんの名前はバヌアと言って一人暮らしをしていた。お茶を飲みながらバヌアと話をしていると、話題が「5代の旅人」の話になった。

「そうか。それで一人旅をしているんだね。シェケル、あんたも大変な目にあってるわけだ。物語は面白いものだが、本当かどうかは実際に見ないと分からないからね、それができるのはうらやましい限りさ。」

「でも、手掛りが少なすぎてどこに向かえばいいのか、分からないんです。」

「その鍵って見せてもらえるかい?因みに私は古いものが好きでね、何かわかることがあるかもしれないねぇ。」

 バヌアは、鍵をかけることで物を守るから守護の役を負っているなどなど、雑学っぽいこと話しながら調べ始めた。

「おやまぁ…この鍵、大事にしなさいよ。このはめ込まれてる鉱石、特別な場所でしか採れないものだ。」

「それはどこですか?少しでも手掛りがあるなら、私、そこに行きたいです。」

「小人の所さ。でもねぇ、問題は入口がどこか、だね。縮小の問題なら、あんたがいれば何てことはないみたいだがね、小人ときたら、とんでもなく警戒心が強いのさ。特に新顔に関しては。」

 シェケルは村の外に初めて出てみて、外には知らないことが多くあることを知った。それと同時に、「村はなんて閉ざされた場所なんだ」と思った。


 考え込んでいたバヌアがぼそりと呟いた。

「…そう言えば、クファナが帰ってきていたか。」

「クファナさんってどなたですか?」

「放浪癖のあるうちの孫だよ。小人…私はあまり好きじゃないがね…あの子は仲良くなってあっちに出入りしてるんだよ。護衛業なんかをやってるクファナに助けてもらうのがいいだろうね。基本的に何でも引き受けてくれるらしいから。」


 バヌアの助言に従って、市場のある方にシェケルは向かった。初めて市場を見たシェケルは人の多さに圧倒された。それでもバヌアが言っていたクファナを探すことにした。そこで、近場の露店の人に声をかけた。

「この辺りにバヌアさんのお孫さん、クファナさんっていませんか?『赤髪の騎士』って呼ばれているらしいのですが…。」

「『もどき』ってつけ忘れてるよ。クファナはもうすぐこの辺りに出没するんじゃないかな。あたしが紹介してあげるよ。ちょっと店番頼むよ!」

 そう後ろに向かって声をかけると、クファナがよく通る大通りに連れて行ってくれた。


 店から少し離れた道の脇に立っていると、向こうから長身で赤毛の女性が歩いてきた。

「クファナ!ちょいと用があるんだ!」

「へぇ、おばさんが?珍しいね。」

「あたしじゃない、この子さ。じゃあね、あとは上手くやりな。」

 そう言って露店の女将さんはそう言って戻って行った。

5代の旅人

初めまして。柊筮です。 ここでは、私の小説・イラストがメインをメインに載せています。 その他にも創作したものを載せていきます。 拙いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

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