「おまけって、お前ダイアーだろ?…何週間か前から、変な魔術師がここに住み着いちまったんだ。そいつの名前もリエルだったような気がする。で、鍵がどうとか言ってたから、案内してやるよ。」
「ダイアー、ばれてたな。」
「何でかなぁ。フード被ってたから顔は見えてないはずなんだけど。」
クワームに案内されて一行はキープ鉱山に住み着いたという魔術師の元に向かった。
「あの魔術師をどっかに連れて行くんなら許可はいらないからな。あいつ何考えてるか分かったもんじゃないぞ。」
「クワームが石頭なだけじゃないの?」
「ダイアー…。クワーム、今のは放っときな。」
「ま、炉に放り込まれないように気を付けとくんだな。」
鉱山の中を大分奥に進むと足場が悪くなってきた。
「シェケルさんと残り2人は足元気を付けろよ。」
「ありがとう。」
「お前、その言葉使い何とかならないのか…。」
渦を巻くような地下トンネルと階段を抜けると、クワームは離れているように言った。通路の壁を押すと目の前を塞いでいた岩が動き、道が現れた。
「この奥に魔術師がいる。あとは勝手にやってくれていい。じゃあな。」
クワームはそれだけ言うと仕事に戻って行った。一行が進むと、長い金髪を持つ人が水を湛えた岩杯を覗いていた。3人が声をかける前に相手が話し始めた。
「ふーん、あなたがシェケル、縮小の魔法使いね?」
「え?あなたがリエルさん?」
「私は第4代首位魔術師にして5代の旅人付魔術師リエル。その昔、炎の魔法使いアマラに手を貸したのは私よ。」
リエルは300年以上前からアマラの次の5代の旅人の訪れを待っていて、シェケルが旅に出た時から見守っていた事を話した。そして、シェケルたちが何を求めているか、ということも当然知っていると言った。
「でもね、私じゃないのよ、あなたの役に立つのは。」
「じゃあ、誰?」
「あなたも私と同じ金髪ね、ダイアー。私の後継者たる者が役に立つのよ。私は現首位魔術師で私が手を貸したのは5代目の旅人。だから、6代目の旅人は次期首位魔術師が助けてくれるってわけ。」
「その方はどこに?」
「簡単よ。私が送ってあげるわ。それと忠告ね、シェケル。直感を信じる事、直感はとても強い感覚だから。貴女はきっと大丈夫。」
そう言うなり、シェケルたち一行の返事を待たずにリエルはシェケル一行を後継者の元へ送り込んだ。
3人が送られたのは、林の中。奥へ進むと2人の魔術師がいた。
「あの2人のどっちかが後継者ってことだろ?争ってるなんて言ってなかったな。」
「だから、直感を信じて、なんじゃないの?シェケルはあの2人だったら、どっちを信じられそう?」
「さすがにまだ分からないよ。」
争い中の2人はシェケルたちに全く気づいていない。互いの力をぶつけ合っている。素人目で見ると、動きが速すぎて青い光と赤い光がぶつかって、火花を散らしているようにしか見えないのだ。暫く茫然と眺めていたが、突然光線が激しくぶつかり合って、空気が振動した。危険を察知したクファナがとっさにシェケルとダイアーを掴んで木の陰に押し倒した。それとほぼ同時に衝撃の波紋が押し寄せた。シェケルとダイアーが悲鳴をあげたことで、争いあっていた2人の魔術師は漸くシェケルたち一行の存在に気付いた。
0コメント