第4話 花園系小人族

 シェケルとクファナは古巣の中を進んでいた。

「向こうに着いたら、あたしから離れないで欲しいんだ。いくらあたしが護衛業を本職とする剣士をやってるとは言え、離れてしまったら護るものも護れないからさ。それだけ覚えといて。」

「分かった。クファナから離れなければいいのね。」

 クファナはシェケルの方を向いて頷いた。暫く進むと、奥に木でできた扉が見えてきた。

「ここが入口だ。」

 クファナは変わったリズムで扉を叩いた。程なくして、中から返答があった。

「どちら様?」

「クファナだ。」

 そう答えると、扉が開けられた。中から現れたのは不思議な素材で作られた服を着た人。

「いらっしゃい。あ、連れがいるのね。こんにちは、私はマシュラ。花園系小人族って人は呼んでるわ。」

「私はシェケルです。…縮小魔法使いです。」


 シェケルとクファナはマシュラの家で少しの間休むことになった。クファナが魔術師に頼んで、体を小さくして小人の世界に来る時は、いつもさっき通った古巣からマシュラの家の裏口から入り、変わったリズムで扉を叩くのは別の生き物と間違えないように、という2人の決まり事なのだ、とマシュラが話してくれた。

「そういえば、こっちにダイアーが来てないか?」

「来てるみたいよ。クファナからダイアーに用があるなんて珍しいのね。」

「シェケルが持ってる鍵の鉱石の出所が知りたいんだ。花園系だと鉱石は分からないだろう?」

「そうね。正直、種類までは特定できないわ。」

 シェケルはマシュラにも見せたが、マシュラは首を横に振った。珍しい物だ、という判断がつくくらいで、それ以上は分からなかった。


「シェケルはもう行ける?」

「うん。マシュラ、ありがとう。」

「次に来た時はもっとゆっくりして行ってね。」

 マシュラの家をでた2人はマシュラに言われた衣装室に行った。小人の世界には衣装室という名の服屋がある。地域によって異なる気候に合わせるため、周囲の小人の中に紛れるため(そうしないととても目立つ)、服を売買する。人間である2人の服は珍しいため、高く買い取ってもらえるはずだ、とマシュラは言った。


 着いた衣装室には「HAPIの衣装室」と書いてある看板が掲げられている。

「『HAPIの衣装室』だって。…センスないよな。」

 着いた途端クファナぼそっと呟いた。2人の姿を店の中から気づいた、細身の店主が出てきた。

「いらっしゃい!どんな服がいいかい?うちには多く揃ってるよ。」

「ここら辺の服と同じような素材ので、あたしは動きやすい服。シェケルは?」

「今、私が着てるのと似た形のものがあれば、それでお願いします。」


 店の中に2人を通すと、店主は奥から2着の服を取ってきた。

「お前さん、見たところ剣術士だろ?だったら、これでいいだろうさ。」

 クファナは受け取った服を見ていたが、頷いて着替えに行った。

「そっちのお嬢さんは、こんなのはどうだい?新作だよ。」

 シェケルに渡されたのは白地で裾の方に緑の斑点があるワンピースだった。

「この生地…花だ!」

「うん?ここに来るのは初めてかい?ここは、花園系だからね、基本的なものは植物を使うんだ。その服、着ておいで、きっと似合うよ。」

 シェケルはクファナの後を追って着替えに行った。


 シェケルが着替えて出てくるとクファナは既に待っていた。

「2人ともよく似合ってるな。」

「この素材の花、なんていう名前ですか?」

「スノーフレークって言うのさ。そいつはきっと今年の流行さ。」

 店主が服の話を滔滔(とうとう)と続けるので、困ったシェケルはクファナに目を向けた。クファナは小さき主人の無言の訴えを認めて、店主の話の腰を折った。

「おじさん、あたしらそろそろ行くから。」

「おお、そうかい、引き留めて済まなかったな。それでは、実り多き旅を!」


5代の旅人

初めまして。柊筮です。 ここでは、私の小説・イラストがメインをメインに載せています。 その他にも創作したものを載せていきます。 拙いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

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