長々と引き留められた『HAPIの衣装室』から解放されて、シェケルとクファナはダイアーの元に向かった。
着いた先は、立派な大木。その大木に向かってクファナは叫んだ。
「おーい!ダイアー!…あれ、留守かな。」
「…はーい!なんだぁ、クファナか」
「なんだぁ、はないだろう?」
シェケルは驚いた。クファナが、物知りで尋ねた事の大半は答えをくれる友達というのは、人間の(今は小人界にいるが)10歳の女の子だった。ダイアーは「5代の旅人」の伝説にも興味を示したが、シェケルの受け継いだ鍵の鉱石についても調べると言った。
暫くして、少しためらいながら、
「あのね、試したいことがあるんだ。」
と言った。シェケルが了承すると、ダイアーは何故かとても楽しそうだった。その様子に何となく嫌な予感がしたシェケルは釘を刺しておくことにした。
「鍵を叩き壊すようなことじゃなかったら、やってもいいよ。」
「それがね、この鉱石の強度が知りたいからハンマーで…っていうのはやっぱり、だめ?」
鍵を元のままの形を維持したいシェケルと 鉱石の強度を知りたくてハンマーでかち割りたいダイアーは暫く押し問答をしていた。その様子を少し離れて剣の素振りをしながら聞いていたクファナは思いついた事を口にした。
「あのさ、取り込み中悪いけど、鍵を元の大きさに戻せば?」
「どういうこと?」
「元々、その鍵は人間サイズだろ?なら、人間サイズに戻せば、ダイアーがもし鉱石をかち割っても端っこしか傷がつかないんじゃないか、と思ってさ。」
結局、シェケルが妥協してクファナの言った案で強度を調べる事になった。シェケルが元の大きさに戻している間にダイアーはハンマーを取ってきた。
「じゃあ、いくよ!」
ダイアーははめ込まれた鉱石に端に思いっきり振り下ろした。『ガン!』と大きながしたが、ガラガラと音がして壊れたのは、ハンマーの方だった。
「あ…これ、すんごく丈夫だね。」
あまりの強度に3人とも茫然として見ていたが、我に返ったクファナがダイアーにどこで採集できるものか尋ねると、ダイアーは即座に答えをくれた。
「まず、この国ではないよ。お隣の鉱山地帯の国でとれるビエンっていう鉱石だよ。それと、きっとこれだけ硬いからから魔法もかかってるんじゃないかな。」
「シェケルの行く先々には面白そうなことしかないな。で、どこの鉱山?」
クファナが聞くと、途端にダイアーは顔をしかめた。
「あいつのところだよ!」
「あいつ?」
「あいつって誰の事だよ?」
「小人界で鉱山持ってて、あいつ、だよ?クワームしかいないよ!キープ鉱山の!あのいじわる!」
それを聞くとクファナはため息をついた。クファナにとっては適当に言い合いをする同年代の知人、というだけだったが、10歳のダイアーにとってはただの意地悪にしか見えないようだ。やれやれ、と首を振った。
「あたしらは先を急ぐから、もう行くよ。ありがとな。」
「もう行くの?行ってもいいけど、何か忘れてない?ご褒美は?」
「あぁ、ごめん、ほら!」
「ありがと!」
クファナはダイアーに外見がウニみたいな物を投げた。シェケルがクファナを見上げると、クファナは投げた物のことについて答えた。
「あれは『ソッピア』って言う果物で、ダイアーの好物なんだ。あれ、りんごサイズのウニみたいだろ?だけど、見た目はともかく、美味しいよ。あたしの趣味とは違うけどね。」
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